相続問題 事例掲載日:2021年 5月10日 生前の夫婦間での自宅の贈与は優遇される? 質問・概要 先日、夫が亡くなりました。私と夫は結婚してから30年以上になります。夫が亡くなる直前に、私の老後の生活のために、夫名義の自宅(評価1000万円)を贈与してくれました。夫の相続人は、私と長男のみです。 夫には、遺産として預貯金が1000万円あるのですが、夫から不動産を贈与されているので、預貯金を相続することはできないのでしょうか。 解答・対応 従前は、長年夫婦で居住していた自宅を、夫が妻に生前贈与した場合には、原則として、自宅の生前贈与が特別受益として取り扱われていました。たとえば、被相続人(亡くなった方)の遺産総額が2000万円(不動産の評価が1000万円、預貯金が1000万円)であり、相続人が妻と子であった場合、妻と子が2分の1ずつ相続することになります。妻が被相続人から生前に不動産(1000万円)の贈与を受けていた場合には、妻はすでに被相続人の遺産の半分である1000万円を受け取っていることになるので、預貯金1000万円は息子が相続することになり、妻は夫の預貯金を相続することができないことになってしまいます。 もっとも、婚姻期間の長い老齢の夫婦間での自宅の贈与は、通常それまでの長年の功績に報いるとともに、老後の生活の安定のためであることが多いでしょう。また、被相続人としても、遺産分割での配偶者の相続分の計算にあたって、自宅の価額を控除して、配偶者の相続する遺産を減らすという意図までないのが通常でしょう。 そこで、民法が改正されて、2019年7月1日以降の相続について、結婚してから20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与は、被相続人が反対の意思を示さない限り、特別受益と扱わないことになりました。そのため、妻が、結婚して20年以上の夫から自宅の生前贈与されていても、夫が反対の意思を示さない限りは、遺産分割のときに相続できる遺産が減ることはありません。 たとえば、被相続人の遺産総額が2000万円(不動産が1000万円、預貯金が1000万円)であり、相続人が妻と子であった場合、すでに妻が自宅の生前贈与されていたとしても、遺産分割協議では考慮されず、1000万円の預貯金について、妻と子が2分の1ずつ(500万円ずつ)相続することになります。 南大阪法律事務所 —《 その他の法律相談事例 》— 配偶者短期居住権 夫が亡くなった後も、夫名義の家にしばらく住みたい 相続問題の事例一覧 親の介護をした子どもと、親の介護をしなかった子どもの相続分は同じ?
質問・概要
先日、夫が亡くなりました。私と夫は結婚してから30年以上になります。夫が亡くなる直前に、私の老後の生活のために、夫名義の自宅(評価1000万円)を贈与してくれました。夫の相続人は、私と長男のみです。
夫には、遺産として預貯金が1000万円あるのですが、夫から不動産を贈与されているので、預貯金を相続することはできないのでしょうか。
解答・対応
従前は、長年夫婦で居住していた自宅を、夫が妻に生前贈与した場合には、原則として、自宅の生前贈与が特別受益として取り扱われていました。たとえば、被相続人(亡くなった方)の遺産総額が2000万円(不動産の評価が1000万円、預貯金が1000万円)であり、相続人が妻と子であった場合、妻と子が2分の1ずつ相続することになります。妻が被相続人から生前に不動産(1000万円)の贈与を受けていた場合には、妻はすでに被相続人の遺産の半分である1000万円を受け取っていることになるので、預貯金1000万円は息子が相続することになり、妻は夫の預貯金を相続することができないことになってしまいます。
もっとも、婚姻期間の長い老齢の夫婦間での自宅の贈与は、通常それまでの長年の功績に報いるとともに、老後の生活の安定のためであることが多いでしょう。また、被相続人としても、遺産分割での配偶者の相続分の計算にあたって、自宅の価額を控除して、配偶者の相続する遺産を減らすという意図までないのが通常でしょう。
そこで、民法が改正されて、2019年7月1日以降の相続について、結婚してから20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与は、被相続人が反対の意思を示さない限り、特別受益と扱わないことになりました。そのため、妻が、結婚して20年以上の夫から自宅の生前贈与されていても、夫が反対の意思を示さない限りは、遺産分割のときに相続できる遺産が減ることはありません。
たとえば、被相続人の遺産総額が2000万円(不動産が1000万円、預貯金が1000万円)であり、相続人が妻と子であった場合、すでに妻が自宅の生前贈与されていたとしても、遺産分割協議では考慮されず、1000万円の預貯金について、妻と子が2分の1ずつ(500万円ずつ)相続することになります。
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