2023年 4月1日 : 南大阪法律事務所 弁護士:西川 大史 飲食店での相次ぐ迷惑行為、法的責任は? 回転寿司店での客の迷惑行為が相次いでいます。回転レーンを流れている寿司に唾をつける、しょうゆ差しや湯呑みを舐めるなど、さまざまな迷惑行為が報道されています。最近では、しょうゆ差しに直接口を付けて飲んだかのような様子を動画撮影してSNSに投稿したとして、被疑者が起訴されたというニュースもありました。 飲食店での迷惑行為については、以下のとおり、刑事責任、民事責任を問われるおそれがあります。 刑事責任 (器物損壊罪) 刑法261条は、「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」として器物損壊罪について定めています。 「損壊」とは物理的に破壊しなくても、その物の効用を害することだとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為は、ほかのお客さんが寿司を食べることができなくなる、しょうゆを使えなくなるので、寿司やしょうゆの効用を害する行為だとして、器物損壊罪が成立する可能性があります。 (偽計業務妨害罪) 刑法233条は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」として偽計業務妨害罪について定めています。 「偽計」とは、人を欺くなどの不正な手段を用いることだとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為は、飲食店の安全衛生面に対して不安を抱かせるおそれがあるため、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。 (威力業務妨害罪) 刑法234条は、「威力を用いて人の業務を妨害した者」も、偽計業務妨害罪と同じく、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられると定めています。 「威力」とは人の意思を制圧するような力だとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為によって、店はその意思に反して、寿司やしょうゆ差しを処分したり取り替えたりしなければならないため、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。 (未成年者であっても犯罪が成立します) 18歳未満の未成年の行為であっても、犯罪は成立します。 刑法41条は「14歳に満たない者の行為は罰しない」と規定しているため、14歳未満の少年であれば罪にはならないのですが、それでも少年審判を受けることがあります。 民事責任 (損害賠償責任) 寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるなどの迷惑行為によって、店には損害が発生するので、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うことになり、店の損害を賠償しなければなりません。 (未成年者の責任、親の責任) 加害者に責任能力がなければ、損害賠償責任を負うことはありません。もっとも、未成年者だから、責任能力がないということにはなりません。責任能力とは、自己の行為の是非を判断できるだけの能力のことだと言われています。これまでの裁判例を総合すると、概ね12歳、13歳以上であれば、責任能力があるということになるでしょう。 未成年者の迷惑行為に対しては親が責任を負うことになります。迷惑行為をした未成年者がまだ幼く責任能力がない場合には、原則として親が損害賠償責任を負うことになります。 また、未成年者に責任能力があったとしても、親には未成年者に対する監督義務があるため、監督義務違反を理由に親が損害賠償責任を負うこともあります。 南大阪法律事務所 弁護士:西川 大史 月60時間を超える残業に対する残業代の割増率が引き上げられます 弁護士コラム一覧 2023年4月から自転車のヘルメット着用義務化がスタート
回転寿司店での客の迷惑行為が相次いでいます。回転レーンを流れている寿司に唾をつける、しょうゆ差しや湯呑みを舐めるなど、さまざまな迷惑行為が報道されています。
最近では、しょうゆ差しに直接口を付けて飲んだかのような様子を動画撮影してSNSに投稿したとして、被疑者が起訴されたというニュースもありました。
飲食店での迷惑行為については、以下のとおり、刑事責任、民事責任を問われるおそれがあります。
刑事責任
(器物損壊罪)
刑法261条は、「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」として器物損壊罪について定めています。
「損壊」とは物理的に破壊しなくても、その物の効用を害することだとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為は、ほかのお客さんが寿司を食べることができなくなる、しょうゆを使えなくなるので、寿司やしょうゆの効用を害する行為だとして、器物損壊罪が成立する可能性があります。
(偽計業務妨害罪)
刑法233条は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」として偽計業務妨害罪について定めています。
「偽計」とは、人を欺くなどの不正な手段を用いることだとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為は、飲食店の安全衛生面に対して不安を抱かせるおそれがあるため、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
(威力業務妨害罪)
刑法234条は、「威力を用いて人の業務を妨害した者」も、偽計業務妨害罪と同じく、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられると定めています。
「威力」とは人の意思を制圧するような力だとされています。寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるという行為によって、店はその意思に反して、寿司やしょうゆ差しを処分したり取り替えたりしなければならないため、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
(未成年者であっても犯罪が成立します)
18歳未満の未成年の行為であっても、犯罪は成立します。
刑法41条は「14歳に満たない者の行為は罰しない」と規定しているため、14歳未満の少年であれば罪にはならないのですが、それでも少年審判を受けることがあります。
民事責任
(損害賠償責任)
寿司に唾をつける、しょうゆ差しを舐めるなどの迷惑行為によって、店には損害が発生するので、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うことになり、店の損害を賠償しなければなりません。
(未成年者の責任、親の責任)
加害者に責任能力がなければ、損害賠償責任を負うことはありません。もっとも、未成年者だから、責任能力がないということにはなりません。責任能力とは、自己の行為の是非を判断できるだけの能力のことだと言われています。これまでの裁判例を総合すると、概ね12歳、13歳以上であれば、責任能力があるということになるでしょう。
未成年者の迷惑行為に対しては親が責任を負うことになります。迷惑行為をした未成年者がまだ幼く責任能力がない場合には、原則として親が損害賠償責任を負うことになります。
また、未成年者に責任能力があったとしても、親には未成年者に対する監督義務があるため、監督義務違反を理由に親が損害賠償責任を負うこともあります。
南大阪法律事務所 弁護士:西川 大史